大手広告代理店の女性社員が自殺するという悲しい事件がありました。
事件の概要は以下の記事にもありますが、長時間という言葉では収まらない程の過酷な労働時間と、上司から耐えられないほどのパワハワが存在していたとのことです。

電通「過労自殺」事件の原因は長時間労働だけではない

2015年12月、電通の新入社員だった高橋まつりさん(享年24歳)が自殺した。これは長時間労働による精神障害が原因だったとして、労災が認定された。彼女はインターネット広告部門に所属し、残業が月100時間を超えたこともある。

出典:Japan Business Press

広告業界の末端に属するボクの実体験を踏まえ、業界内の当たり前「残業」について考えたいと思います。

サービス残業 月100時間を約10年続けてみた

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以前勤めていたデザイン事務所は朝9時に出社、退社は22時〜23時でした。
1日の残業時間は4〜5時間、月間で100時間ってところでしょうか。そして、完全なサービス残業。残業代0円です。
成果報酬もなかったので、完全に固定された給与が支払われる仕組みでした。

当時の主な仕事は、週2本のスーパーマーケットのB3折込チラシ。
B3は新聞に2つ折りで入っているサイズのチラシです。
週2本ってそんなに大変か?って思いますよね。
では、簡単に当時の仕事内容を紹介します。

折込チラシの場合、新聞折込をする日の前週に印刷をします。
例えば、毎週火曜日に折込する場合は、前週の木曜日あたりが印刷日。
なので、週2本のチラシを作る場合、1週間(土日を除く5日間とした場合)で処理する作業は「今週印刷する原稿の修正」「新規作成の原稿」の計4本(2週分)を処理します。

支店用の差替チラシも同時作成していたので、合計8本分(4本×2パターン)のチラシを作成していました。
さらに、文字校正(文字表記が間違っていないかの確認)、撮影商品の手配・撮影・画像処理、2週先の原稿の手配などを行っていました。

B3チラシを1本新規作成するのに要する時間はおおよそ1日。
新しいチラシを作りつつ、その週に印刷すべきチラシを修正し、クライアントからのOKをもらい印刷工程に進めていくわけですから、定時で作業は終わりません。当然のように残業するわけです。

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数年前の記憶ですが、大体このようなサイクルを10年ほど続けていました。
よくまあ、大きなトラブルもなくできたものだと今更ながらに思います。

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長時間の労働で「鬱」になったか?

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ボクの場合、NOです。うつ病にはなりませんでした。
特別に強靭な精神力と体力を持っていたわけではありません。もちろん消耗しましたし、それなりに変化はありましたが。

長時間労働で鬱よりも攻撃的な性格に変わった

ボクの場合、残業の最初と最後の1時間くらいは「クライアントからの連絡待ち」時間でした。
連絡がくるのをひたすら待つわけです。非常に無駄な時間でしたが、デスクでただ待っているだけなので、身体的には楽でした。そこから「あ〜でもない、こうでもない」と修正事項を言い渡され一気に作業をするわけです。
また、一つの案件について印刷のタイムリミットがあったので、自分が必要以上に追い込まれることもなかったように思います。乱暴な言い方ですが、クライアントがどれだけ修正したくてもここまでに終えなければ、折込できないというリミットが確実にあるのです。その分、本当にギリギリまで作業をしていました。

常にギリギリの作業は、鬱状態にするよりもむしろ自分を攻撃的に変えました。
簡単に言えば、キレやすくなっていました。
時間に追われ、次のスケジュールを気にしていたので常時イライラしています。そこに数時間の「待ち」の後、大量にやってくる修正の依頼。
今では何故そこまでと思いますが、電話を叩きつけるよう切ったり、クライアントに食ってかかったりと「若い」だけでは済まないような行為をしていました。

自分を見失い、とにかく案件を片付けることだけに力を注いでいました。

終わりも周りも見えない残業ほどツライものはない

年に何度かは、朝7時くらいまで職場で作業し2時間ほど自宅で睡眠をとって9時には出社する。
そんなこともありましたが、それも数回であり、職場と自宅が近いこともあり「睡眠時間」はそれなりに確保できていました。「死」を意識するほどの苦しみもありませんでした。
今回の電通事件と比べれば、いくらもマシな状況だったと思います。

終わりの見えない残業、というより残業なのか定時なのかの区別もないような労働状況は異常です。
ボクの程度の残業経験なら「誰でもやってるよ」と言われる社会が普通だとはとても思えません。

仕事は終わらず、周りからは当たり前だと言われる。
これが普通ならば、日本の企業はオールブラックです。

根本的には自分がバカなだけでした

長いこと自分の働き方に疑問を持っていませんでした。
遅くまで働くことにストレスを感じながらも、広告の仕事とはこういうものだと、誇らしく思っていたフシすらありました。
最終的には会社の経営状態が難しくなって半ば戦力外通告をされて、働き方に疑問を持ったわけですからホントにアホですわ。

でも、働き方を考えるきっかけを貰ったことは確かです。

最後に、今回のまとめ

現在も企業には属していますが、自分の仕事としてWEBデザインや広告デザインをしています。
以前のようにとにかく案件を片付けることだけに力を注ぐのではなく、効果や運用について本気で考えるようになりました。
だって自分で創った仕事ですからね、本気度が違いますよ。

前職を辞める時に、「お前くらい仕事は新人でもできる」と大変ありがたい言葉を最後にいただきました。
今も新人のつもりで、自分の仕事を創っているところです。

広告や出版、マスコミ関係の仕事を目指している方は今もいるでしょう。
でも、地方であっても旧体質の企業が非常に多いので注意してください。そして、その仕組みは変わることはないと思います。
新人のデザイナーさんや、就活生に少しでも参考になればと思います。

それでは、今回はこのへんで。