同じ提案でも、すんなり通る相手と何度説明しても反応が薄い相手がいます。

商談が噛み合わないと、「相性が悪かったんだろう」で終わらせてしまいがちですが、実はこの差、提案の中身ではなく「届け方」に原因があるかもしれません。

人には情報を受け取るときに優先的に使う感覚があります。

この「優先的に使う感覚」を、NLP(神経言語プログラミング)では優位感覚と呼びます。
NLPは1970年代にアメリカで体系化されたコミュニケーション心理学の手法で、そのモデルの1つがこの優位感覚の分類です。

この記事では、優位感覚の基本と、商談で相手のタイプを見分けて伝え方を切り替える方法を紹介します。

優位感覚とは——人は「目・耳・身体」のどれかを優先して理解する

人間の五感は、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の5つ。
このうち触覚・嗅覚・味覚をまとめて「身体感覚」とすると、大きく3つのチャネルに分かれます。

  • 視覚(Visual)=目
  • 聴覚(Auditory)=耳
  • 身体感覚(Kinesthetic)=身体

NLPではこれを「VAKモデル」と呼びます。
誰でも3つすべてを使っていますが、情報を処理するときに無意識に優先するチャネルが優位感覚です。

優位五感の3タイプ

利き手や利き足と同じように、人には「利き感覚」があるのです。
この前提を持つだけで、提案や説明のやり方が変わります。

「目」のタイプ——見てわかる、が最優先

視覚優位の人は、目に見える情報を重視します。

話を聞いているとき、頭の中で映像やイメージを浮かべるタイプです。
話すテンポが速く、「見える」「明るい」「イメージ」といった視覚的な言葉を使う傾向があります。

ビジネスの場面では、資料やカタログをじっくり見る、数字やグラフに反応する、現物の写真を求めるといった行動に出やすくなります。

視覚優位の人に見られる特徴
  • 文章などを読んだ時に「映像」が浮かぶ
  • 工作やモノ作りが好き
  • 球技、道具を使うのが得意
  • 人の顔を覚えるのが得意
  • 早口でテキパキと話す など

「耳」のタイプ——言葉と説明で納得する

聴覚優位の人は、言葉や音の情報を重視します。

論理的に順序立てて説明されると納得しやすく、「聞こえる」「響く」「調子」といった聴覚的な言葉を選ぶ傾向があります。声のトーンやテンポが安定していて、人の名前や会話内容をよく覚えているのも特徴です。

ビジネスの場面では、口頭での説明を丁寧に求めてくる、口コミや評判を重視する、「それ、どういう意味?」と言葉の定義を確認する、といった行動に出やすい。

聴覚優位の人に見られる特徴
  • イメージする時に音や音楽が流れる
  • 鼻歌をよく歌う
  • モノマネが得意
  • 人の名前、会話を覚えるのが得意
  • 声のトーン、テンポも安定した話し方

「身体」のタイプ——触れて、体験して判断する

身体感覚優位の人は、実感や体験を重視します。

「なんとなく良い感じ」「しっくりくる」「手触りが違う」など、身体で感じたことを言葉にする傾向があります。話すテンポはゆっくりで、ボディランゲージが多い。
考えるとき、無意識に顎や腕を触る癖がある人もいます。

yama

私はこのタイプですね。顎を触る癖とかありますし。

ビジネスの場面では、資料より実物を触りたがる、現場を見たがる、「実際に使ってみないとわからない」と言うタイプ。

身体感覚優位の人に見られる特徴
  • ボディランゲージをよく使う
  • 「〜な感じ」など身体に感じたことを伝えることが多い
  • 自分の体験を重視する
  • 考える時に身体の一部を触る癖がある
  • ゆっくりと話す など

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商談中に相手の優位感覚を見分ける3つの観察ポイント

初対面の相手でも、観察すればタイプの手がかりが見えてきます。
ポイントは、質問をした時の相手の目線です。

優位感覚を見分けるポイント

① 質問への反応——目線の方向でタイプが出る

相手に何か質問をしたとき、考える瞬間の目線を観察してください。

  1. 目線がに動く → 視覚優位(頭の中で映像を思い浮かべている)
  2. 目線がに動く → 聴覚優位(頭の中で音や言葉を再生している)
  3. 目線が左下に動く → 身体感覚優位(身体の感覚を探っている)

一度の質問で断定はできませんが、「この人は上を向くことが多いな」と傾向を掴む手がかりになります。

② 相手が使う言葉に優位感覚が表れる

「見通しが明るいですね」と言う人は視覚優位の傾向。
「その話、ピンとこないんですよね」と言う人は身体感覚優位の傾向。

人は優位感覚に対応した述語を無意識に選びます。
商談中、相手が繰り返し使う表現に注目してみてください。

  1. 視覚系:「見える」「明るい」「描く」「はっきり」
  2. 聴覚系:「聞こえる」「響く」「話が合う」「調子」
  3. 身体系:「感じる」「つかむ」「しっくり」「重い・軽い」

③ 資料の扱い方にも違いが出る

提案資料やサンプルを渡したとき、相手がどう扱うかも手がかりです。

  • 渡した資料をすぐ開いてじっくり読む → 視覚優位
  • 資料はちらっと見て「で、これどういうことですか」と口頭説明を求める → 聴覚優位
  • 資料よりサンプルを手に取る、「これ、実物見られますか」と聞く → 身体感覚優位

タイプ別・提案の届け方を変える

相手のタイプに見当がついたら、伝え方を調整します。
内容を変える必要はありません。同じ内容で「見せ方」を変えるだけです。

「目」の人には——数字とビジュアルで見せる

写真、図面、施工事例の画像、ビフォーアフター。
視覚優位の人には、言葉で説明する前にまず「見せる」のが効果的です。

デザインの仕事では、ラフやワイヤーフレームなど「こんな感じになる」という視覚的な情報を早い段階で提示するようにしています。
また、複数のデザイン案を用意してその場で違いがわかるようにするのも有効ですね。

私が商談時にもう1つ意識しているのは、資料をじっくり見ていただく時間を確保することです。
つい自分のペースで話を進めたくなりますが、じっくり読みたい人の前でどんどん話を進めるのは逆効果ですよね。

「耳」の人には——実績と口コミを言葉で語る

聴覚優位の人は、丁寧な説明と第三者の声を重視します。

「他のお客様からはこういう声をいただいています」
「〇〇業界でも採用されています」など

口コミや実績を言葉で伝えるのが有効です。
資料を渡して終わりではなく、資料の内容を口頭で補足説明する時間を取る方が納得感が上がります。

デザイン業務では「なぜ、このデザインなのか」を説明できることが重要になります。
「高級」や「可愛い」などの曖昧な表現ではなく、デザインした理由を自分の言葉で説明できるようにしましょう。

「身体」の人には——現場・サンプル・体験で納得させる

身体感覚優位の人には、実際に触ってもらう、使ってもらう、現場を見てもらうのが最も効果的です。

デザインの仕事でも、これは同じでした。
デザイン提案なので「目」で見せれば十分だと思うかもしれません。たとえば名刺デザインであれば、A4用紙にレイアウトを印刷して見せれば内容は伝わります。

身体感覚優位の方にはこれだけでは足りません。
「実際は〇〇という紙を使うので、もう少し厚みが出ます。インクの乗りも変わりますし、紙の手触りもいいですよ」と口で補足しなければならない。
言葉で埋めるほど、相手の表情は曇っていきます。

実物と同じ紙質・同じ仕様で出力したサンプルを用意すると、反応が変わります。
手に取った瞬間に紙の厚みがわかる。インクの発色も実感できる。
さらに、そのサンプルで実際に名刺交換をしてもらえば、渡したときの相手の反応まで体験できます。
説明の言葉を10分重ねるより、1枚のサンプルを手に取ってもらう方がはるかに感触が良いです。

食品なら試食、製品ならサンプル、工事なら施工現場の見学。
「体験していただくのが一番早いです」というアプローチが、このタイプには最も響きます。

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優位感覚を意識するときの注意点

優位感覚は便利な観察の枠組みですが、万能ではありませんし、3タイプの1つに完全に分かれるわけでもありません。
状況や話題によって優位感覚が切り替わることもあります。

「この人は絶対に目タイプだ」と決めつけるのではなく、「今の場面では視覚を優先しているようだ」くらいの捉え方が良いでしょう。

もう1つ注意したいのは、自分自身の優位感覚の偏りです。
自分が視覚優位だと、無意識に「見ればわかるだろう」と資料を渡すだけの提案になりがちです。
相手が聴覚優位なら、それでは伝わりませんよね。

「伝わらないのは相手の問題ではなく、届け方の問題かもしれない」。
この視点を持つだけで、次の商談の組み立て方は変わるはずです。

それでは、今回はこのへんで。

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